分裂酵母の情報伝達

分裂酵母は栄養源の豊富な時は体細胞分裂過程により増殖し、栄養源飢餓と性フェロモンの存在下では接合した後に胞 子形成する有性生殖を行う。分裂酵母の分化を制御する情報伝達系には栄養源を感知して伝達する情報伝達系とフェロモンのシグナルを伝える情報伝達系、さら にはストレスを感知する情報伝達系などがある。分裂酵母のフェロモンの情報伝達系ではGタンパク質とRasからMAPキナーゼ系の因子Byr2, Byr1, Spk1へと情報が伝わる。一方、栄養源の情報伝達系はcAMPが中心となり、cAMP濃度の変動がその下流の因子の機能変化を引き起こす(図1)。ストレスを感知するシグナル伝達系は、外界の浸透圧、酸化ストレス、紫外 線、栄養状態など様々な刺激によって誘導される経路で、動物のストレス伝達系路に相当するMAPキナーゼ経路が存在する。分裂酵母は情報伝達系においても 出芽酵母より高等生物型であると考えられる点がある。 出芽酵母のRASはアデニル酸シクラーゼの活性調節を行っているのに対し、分裂酵母のRasは高等生物におけるMAPキナーゼ系との共通が見られるプロテ インキナーゼ群を調節している。また分裂酵母ではアデニル酸シクラーゼの活性調節が3量体型Gタンパク質によっていることなども高等生物型に近い例の1つ である。このような点からも分裂酵母の情報伝達系の解析はモデル生物としての意味が大きく、最近研究が盛んに行われている。ーーーーー遺伝子リスト

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川向 誠、分裂酵母のシグナル伝達系。遺伝子の構造と機能(駒野徹 編)学会出版センター、87-96 (1998)、
川向 誠、分裂酵母の分化を制御するシグナル伝達系の解析、農化、73:1147-1153 (1999)

川向 誠 分担 執筆 生物化学実験法49「細胞内シグナル伝達研究法」、福井泰久編著、学会出版センター(2004)

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